今まで大大阪の都心部、船場・島之内地区(旧東区をメインに西区、旧南区にかけて)を三回探索しましたが、今回初めて大阪市を脱出、兵庫県神戸市へ参ります。
神戸は言うまでもなく日本を代表する大港湾都市であり、1868 年に開港して以来、常に海外から最新の情報が流入する都市でした。飛行機が国際交通の中心になってからまだ半世紀も経っておりません。長きに渡って「洋行」するとき、人は港から船に乗るものだったのです。
東京に対する横浜、大阪に対する神戸はいずれも巨大都市の外港であり、よく似ていますが、しかし当然違いもあります。横浜港は太平洋航路、つまりアメリカのサン・フランシスコやパナマ運河を通ってニューヨークへ行く航路、また南米へ行く航路などが主体だったのです。
それに対して神戸は、マルセイユやハンブルクなど欧州各港から地中海を経てスエズ運河を通り、インド洋からマラッカ海峡を通り、上海を経て神戸に至る、欧州航路の終点でした。
従って昔の本を読んでおりますと、東京在住の文士などでも渡欧するときは特急つばめ号で神戸に来て(東海道本線は新幹線と違い、東京〜神戸間なのです!! 国鉄時代、ヨドバシカメラの位置に大阪鉄道管理局がありましたが、その前身は神戸鉄道局だったのです)、オリエンタルホテルなどで一泊してから目の前の波止場から乗船、という描写によく出会います。
ですから、神戸は欧州の香りが濃い街ですが、横浜はアメリカンな雰囲気が漂っています(戦後、横浜港には進駐軍が入り、米軍基地がおかれた影響も大きいでしょう。関西は米軍の影響、関東と比べると非常に薄いですからね)。ジャズにしても、横浜のジャズはアメリカからダイレクトに入ったものですが、神戸のジャズはマルセイユ、上海を経たコンチネンタルなものでした。
現在では神戸市の中心ターミナルは三宮となっておりますが、往時は神戸駅こそが神戸の中心でした。本日は回れませんが、神戸駅は今でも1934 年に建てられたスクラッチタイル張りの近代建築で、正面にはステンドグラス製の大時計が時を刻み続けています。一番線には東海道本線の終点と山陽本線の起点を表す標章が見られます。かつては北陸本線の特急雷鳥なども、大阪駅ではなく神戸駅発着でした。
神戸が日本に於ける発祥の地、というもの、沢山あります。マッチ、ラムネ、ゴルフなどなど。
今でこそ日本中のちょっとした街にはソニープラザなどがあって気軽に輸入菓子を買えますが、僕らが子供の頃には「舶来食品」など極めて希少なもので東京や大阪でも滅多に手に入らず、神戸や横浜の専門店を探してようやく見つかる、そういうものでした。今はなき神戸の「ミッチャン」など、四十代以上の人は誰もが懐かしむ、それはそれはハイカラなお店でした。
世の中便利になりましたが、しかし「特別なもの」が「普通」になってしまうこと、ちょっと寂しい気もしますね。
今日はまず、旧居留地を歩きます。
開国当初、外国人は日本国内に自由に居住することはできませんでした。そのために定められたのが外国人居留地です。長崎に於ける出島と同じようなものでした。1868(明治元)年、イギリス人技師J.ウィリアム・ハートの設計によって碁盤目状の整然とした街として誕生、1899(明治32)年に廃止するまで、全部で126 区画に分けられ、colonial スタイルの木造洋館や煉瓦の倉庫などが建ち並んでいたのです。治外法権で、日本の裁判権の及ばないエリアでした。小泉八雲が来日して最初に働いたのが、居留地で刊行されていた英字新聞「ジャパン・クロニクル」であったことも知られています。
居留地解消後、住環境のよい山手に異人館が建ち並ぶようになりました。居留地に残る当時の建物は15 番館(重要文化財)のみですが、それ以降も貿易商社や海運会社のオフィス街として栄え、大正〜昭和初期のビルヂングが建ち並ぶ現在の居留地の景観を形作りました。
なお、居留地に住めたのは当時の大日本帝国政府と条約を締結した国の国民だけでした。清朝(中国)は未締結国だったので清国人は居留地に住むことができず、その西側(雑居地)一体に南京町を形成しました。
横浜の中華街は今でも職住一致の町で、実際に住んでいる人が多いのですが、神戸の南京町は狭いので今では商業ゾーンです。横浜華僑6000 人に対し神戸華僑は8000 人と言われていますが、神戸で華僑が多いのはトアロードから鯉川筋にかけての山手エリアとなっています。
因みに「華僑」とは中国籍(中華人民共和国若しくは中華民国)を維持している人を指しますが、最近は日本に帰化する人も少なくありません。移住地の国籍を取得した人のことは「華人」といって区別します。日本の場合は「中国系日本人」になりますが、日本的に改名することが多いので名前だけでは判らなくなってしまいます。
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